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瀬戸内国際芸術祭2013で建築をつくる(石井大五+フューチャースケープ)


by 石井大五+フューチャースケープ建築設計事務所

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伊吹島とはこんなところ 百手祭

   →伊吹島とはこんなところ

百手祭は、今年の五穀豊穣や大漁、厄除けなどを祈念して、旧暦の2月1日前後に行われる弓射の行事です。四国にはかなり残り、香川県では、特に西讃地域に多く、伊吹島の百手祭もその一つとして、江戸時代からの記録があります
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百手とは、1手2本で百手200本の矢を射ることを指し、東京の明治神宮で、年に数回、平安時代の装束に身を包んだ射手が古式に則り行うのを、ご覧になった方もいらっしゃるかと思います。

厄年の人が射子(射手)となることが多いようですが、伊吹島では、昔から、厄年の島民と中学生が射子となっています。昔、数百人の中学生がいた頃は、中学生の射子だけでも40人近い数となり、それさえも、希望者全員が出られる訳ではありませんでした。ただし、今は、厄年と中学生だけでは数が足らず、この島の一大産業である「いりこ」関係者も加わっています。2016年の出場者は、中学生3人と厄年および「いりこ」関係者の男性15人の18人。在住者だけでなく、出身者で近在にお住まいの方も参加しています。

さて、日曜日の百手祭を控えた金曜日。舞台となる伊吹八幡神社の鳥居には幟が立ち、的場となる空き地では草むしりが行われていました。
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そして、神社の本殿には、的が用意されていました。
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驚くなかれ、この的は、島民の自家製。取り寄せた竹を割って編んで、下地をつくり、そこに和紙を張り、墨で的を書きます。それが伝統なのか、中央の黒的は筆で、的の外周を縁取る黒線は藁で書くそうで、線の粗さが、対照的です。
的は、毎年新調していましたが、今年、初めて昨年のものを使うことになりました。担い手の不足が理由です。ただし、矢で射るのだから当然といえば当然ですが、和紙は新調しています。張り合わせた和紙の乾きの時間の関係から、1週間前に作業を行います。

さらに、集落の6分団から交代で2分団が一人ずつ代表を出し、2日前から社務所に籠って、島民に配るお神酒代わりの甘酒づくりをするのも、この島の伝統。そして、その代表の一人は、祭の当日の朝4時から5時ぐらいに、港に儀式で使う海水を汲みに行くそうです。誰と会っても話してもいけないとのこと。奥の深い祭です。

翌日の土曜日は雨。本来なら、この日に的場の設営もある程度行いますが、天候のため、当日の早朝に順延されました。
雨も上がり、晴れ上がった日曜日。
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朝から、青年会が中心となって、席を設え、的場をコの字に囲むように筵(むしろ)を掲げ、竹で控えを取って、的を設置します。
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今まで見たことのある円形の的とは違い、惚れ惚れするぐらい、風情のある的。
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後ろの竹の下地の影が逆光で落ち、それがまた味わいを深くしています。
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中央の黒丸は、単なる黒丸に非ず。実は、「鬼」という字を書いて、その上を黒丸でつぶしています。近づいて見ると、黒い丸の中に、うっすらと黒く、鬼らしい文字の線が読み取れます。
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さらに詳しくいえば、「鬼」の文字は、「鬼」に非ずして、「甲」と「乙」、そして、無を意味する「ム」の3文字を組み合わせて「鬼」に似せた字にしているという説もあるようで、意味するところは、「甲乙なし」「正月から争いをしない」ということのようです。

午前10時、伊吹八幡神社の社務所の前に、神社の神職、総代、島の各種団体の長、そして、本日の射子、羽織袴に身を包んだ中学生と厄年の男性が集まりました。一列に並ぶと、神事「神度卸」の始まりです。
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先ずは神主を先頭に、本日の百手祭の的場を横切ります。
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一回りして、神社の鳥居から、再び社務所の前に出ると、今度は、参道の階段を上り、本殿に向かいます。
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関係者が本殿に昇ると、お祓いや祝詞の奏上、玉串奉奠などが30分にわたって、厳粛に行われました。
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儀式を終えた一行は、境内にある小さな社、若宮神社にお詣りし、本殿の橋掛かりの下をくぐって、今度は、集落の奥にある荒神社に向かいます。
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荒神社に参詣すると、次に目指すのは、集落を突っ切った先にある、西の天神社。
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そして、参詣後、再び伊吹八幡神社に戻ります。集落の中央を大きく回ることで、集落全体を、神事に合わせて、清めているようにも見ました。
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ここで昼休みです。

午後0時半、18人の射子たちが、的場に設けられた席に着きました。
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式次第は、最初は「試射」。それから、本番前半の「かわらけ」への弓射、そして、後半の「黒的」への弓射となります。「かわらけ」の弓射では、「かわらけ」を割ると、1回に付き3000円の報奨金が出ます。これは、1回当たりが出ても、終わりとはならず、何巡りも続きます。
そして、メインイベントの黒的の報奨金は25万円。これは、当たりが出た段階で終了。何とも、大盤振る舞いの金額で、島にいくつもある漁業組合の後援によるもの。豊かな漁業の島ならではです。

先ずは、試射。前組と後組、9人ずつの2組に分かれて、一巡ごとに一人一手2本ずつ、代わる代わる矢を射ります。
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的までは10m程度の距離。射子の立つ位置より、的の位置が小高くなっており、そこ立てた的の中心の高さは、2m程度。上向きですから、難度がかなり高くなります。
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弓矢は、一部は貸し出しですが、島に、本物の弓矢を飾る習慣があって、今でも、かなりの家に残り、自前も多いようです。
中学生は、学校で少し練習をするそうですが、大人は、ほぼぶっつけ本番。
試射の回を重ねると、少しずつ、的に当たる率が増えて来ました。50分程度の試射で、「かわらけ」の的に変わります。
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さあ、ここからが本番。見物の人も増えて来ました。
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的の近くを射る率が、ますます高くなった気がするのは、現ナマが懸かったからなのか、それとも試射の効果でしょうか。
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この「かわらけ」で、座をさらったのは、中学生の射子。当たりそうで当たらない射子が多い中、「かわらけ」を3度当て、報奨金を獲得しました。今日の優勝候補の一人に浮上しました。
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「かわらけ」にかすっても、当たりは当たりなので、判定員が的に近寄り、審議し、確認します。
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そして、とうとう、お目当の「黒的」の時間です。
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「黒的」の上に、百手祭を祝う特別な紙が貼られ、その下には、本日の報奨金の後援者の名が掲げられます。注連縄も懸かりました。中央下の「一金二十五万円也 黒星賞」がその報奨金に関する張り紙。その右や下段の金額は、どの漁業組合がどれだけお金を出したかを示すものです。
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さて、「黒的」になると、かわらけの時以上に、的近くを抜く矢が増えて来ました。回を重ねるたびに、皆さん、腕を上げてますね。優勝候補の中学生もうかうかとしていられません。
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ぎりぎりはあっても、1巡目は、結局、誰も的中せず、2巡目となります。射子の立ち位置を示す地面のむしろが、1mほど前に動きます。
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的中が出ないと、少しずつ、立ち位置を前に移動させ、当たりやすくして行くのです。年によると、延々と何度も前に出しても、的中者が現れず、4時近くまで続くこともあるそうです。

2巡目に移ります。まずは、前組。「黒的」の近くを攻める射子はいても、本丸は落とせません。
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そして、後組へ。一人目、二人目と続きます。もう少しだったのに、微妙に外しています。
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三人目に現れたのは、旧知の網元。インフルエンザで倒れ、出場がかなわなくなった息子の代わりの出場ですが、背後の筵(むしろ)に当てたり、的の縁を抜いたり、試射とかわらけを経ても、いまだ弓矢をコントロールできず、腕がふらふらと、心もとない感じです。そして、弓を放ちました。
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当たった!!!!!!!!
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午後2時50分、2時間半に及ぶ勝負を制したのは、いちばん泡沫候補に見えた網元(失礼!)。数々の優勝候補を押しのけて、見事「黒的」に当てました。的外れな矢ばかり射っていたのに、命中させてしまうとは、これだから、勝負は分かりません。ご本人は大喜びですが、観客は、予想外の優勝者に、少しあっけに取られています。
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「かわらけ」の的中の際には、的場の審議員が判定しましたが、25万円の「黒的」となると、公正を期するために、島の長老の出番となります。的場を見下ろす公民館に陣取った長老の元に、的の紙とその紙を射抜いたままの矢が持ち込まれます。お三方による厳正な審査の末、網元の的中が認定されました。まあ、今回は、微妙な当たりではないので、誰も異論がありません。おめでとうございます。
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しかし、弓射は、まだ少しばかり続きます。2巡目の残りの人のために、「かわらけ」を用意して、粛々と行われます。しかし、「黒的」が出るのを見たせいか、島民も帰り支度、そして、モチベーションが下がってしまったのか、「かわらけ」に当てる射子もいませんでした。しかし、「黒的」的中で幕引きにせず、淡々と残りの式次第が続く感じも、個人的には嫌いではありません。
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行事は終了しましたが、祭りはこれで終わりではありません。的中させた優勝者は、25万円を受け取りますが、それとともに、宵に、関係者を招いた宴を開かなければなりません。正確には、すでに宴は準備されており、その費用を優勝者が負担することになります。宴の費用は差し引いても、ちゃんと賞金は残るそうですから、ご心配なく。

百手祭の様子です。Part1は、弓射の前に行う神事の様子です。

Part2は、試射から、かわらけの的を経て、最後の黒的までを紹介します。

by future-scape | 2016-03-01 22:24 | 伊吹島 ご案内