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瀬戸内国際芸術祭2013で建築をつくる(石井大五+フューチャースケープ)


by 石井大五+フューチャースケープ建築設計事務所

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瀬戸内国際芸術祭2013 作品巡り−伊吹島 後編

キム・テボンさんの作品からしばらくは、穏やかな起伏が続き、作品巡りも楽になります。島らしい路地をくねくねと歩いて行くと、途中、泉蔵院の脇を通って行きますが、ここは、伝統行事「島四国」の出発点。

そして、家並に埋もれた場所にあるのが、作品番号138の向井山朋子さんの「夜想曲」。伊吹島の民家を利用したインスタレーションです。
壊れかけていますが、母屋の前には、トイレと風呂に使われた離れも残っていますし、入口脇では、縦樋が伸びて、天水井戸につながっています。島の記憶に触れる場所でもあります。
瀬戸内国際芸術祭2013 作品巡り−伊吹島 後編_e0331722_21382721.jpg
暗い室内に入ると、東日本大震災の津波で泥だらけとなった、石巻の小学校にあったピアノが置かれています。そこに石巻や観音寺の小学校で採取した声が、家のすぐ向こうから聞こえるかのように重なります。
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瀬戸内国際芸術祭2013 作品巡り−伊吹島 後編_e0331722_21384118.jpg
そのピアノの上を流れている薄紅色は口紅。
向井山さんが被災地で話を聞いた際、口紅を塗るという日常的な行為さえできない女性の話が、強く印象に残ったそうです。
瀬戸内国際芸術祭2013 作品巡り−伊吹島 後編_e0331722_21425737.jpg
思ったよりなまめかしくもある口紅の質感からは、災害でも、けっして踏みつぶせない女性の存在の根源や尊厳、ジェンダーの問題、あるいは、血や生理、生命のメタファーに、イメージが広がって行きました。

そこから、伊吹島のディープなエリアに近い路地を抜けて行くと、作品番号139のLUNA CLIPさんの「歩み」に辿り着きます。
瀬戸内国際芸術祭2013 作品巡り−伊吹島 後編_e0331722_22291752.jpg
香川あたりで、日よけによく使われてるものの、どこかあか抜けない感じの黒い寒冷紗が、暖簾に仕立てられ、この家の元々の屋号を書くと、あら不思議、小粋なサインとなりました。
瀬戸内国際芸術祭2013 作品巡り−伊吹島 後編_e0331722_21441344.jpg
暖簾をくぐると、家の中が段ボールでつくった海の洞窟となり、そこに、段ボールでつくった亀が佇んでいます。民家の玄関が、竜宮城のような別世界への入口に様代わりです。
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瀬戸内国際芸術祭2013 作品巡り−伊吹島 後編_e0331722_21472513.jpg
目で涼は楽しんでも、しかし、亀以外は別世界に入れず、海の底のようには涼しくない島の路地に、やっぱり逆戻りすることになってしまいました。

少し坂を上ると、今回の作品の中では、最高点にある作品番号140の関口恒男さんの「レインボー・ハット」に到着です。
瀬戸内国際芸術祭2013 作品巡り−伊吹島 後編_e0331722_21481414.jpg
出来上がった作品からは想像つかないでしょうが、春から数ヶ月にわたって、関口さんが自力でつくり上げた作品です。
大きな榎の木の回りに、木の枝を組み上げて骨組をつくり、毛布を張ってドームにした上に、石灰や土を塗り込み、最後に、緑陰となる植物が植えられました。

中は、夏の暑さも遠ざかり、心地よい風が通り抜けて行きます。そのほの暗いドームの中に目を凝らすと、どころどころに漂っているのが虹。
瀬戸内国際芸術祭2013 作品巡り−伊吹島 後編_e0331722_2149870.jpg
瀬戸内国際芸術祭2013 作品巡り−伊吹島 後編_e0331722_21523621.jpg
地面に掘った水盤に鏡が仕掛けられ、その鏡が時間に応じて、太陽光を追尾して、ドームの中に、虹をつくり出します。
瀬戸内国際芸術祭2013 作品巡り−伊吹島 後編_e0331722_2153350.jpg
丁度、伊吹島の季節と月日と時刻を、虹が、刻一刻と、ドームの中に記録していくようにも見えました。
自然の起伏のようなドームと言い、虹と言い、その虹を出現させる方法と言い、プリミティブな感覚に満ちた場所で、陸から隔たった島という小宇宙の中に、もう一つの小宇宙をつくり出したようでした。
瀬戸内国際芸術祭2013 作品巡り−伊吹島 後編_e0331722_21541099.jpg
最後は、作品番号141番のみかんぐみチームの「伊吹島づくりラボ」です。
関口さんの作品から、伝統行事「島四国」の終点、西の堂を経由して、さらに、ずっとずっと歩いて行くと、島のクリーンセンターの先に、飛んでもない坂が現れ、下り切った先の海際に、以前、いりこ加工場だった建物が現れます。
瀬戸内国際芸術祭2013 作品巡り−伊吹島 後編_e0331722_21542437.jpg
台風で損壊して、操業を止めたその加工場を、伊吹島を研究するラボに改修したプロジェクトです。

改修のコンセプトは、この工場内にある材料を使って行うというもの。
瀬戸内国際芸術祭2013 作品巡り−伊吹島 後編_e0331722_21551178.jpg
入口から奥へ導く通路は、いりこを干すためのせいろを運ぶ台車で流れをつくり、乾燥のためのボックスがビデオシアターとなり、ラウンジの天井は、ここで寝起きしていた作業員の布団を断熱材に利用しています。
瀬戸内国際芸術祭2013 作品巡り−伊吹島 後編_e0331722_2156168.jpg
そして、看板や、室内を飾る絵は、小中学生とのワークショップで製作したもの。
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施設の中心は、この巨大な1/300の島の模型。このぐらい大きくなると、島がよく理解できます。そこに、島民から集めた島の情報を旗にして立て、回りの黒板には、詳細な情報が書かれて行きます。
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作業員が寝泊りしていた2階の個室は、島民が研究員となって島を研究するラボとなっています。中には、その成果が張り出され、これを見ると、先に、こちらを見てから、島を回れば、もっといろいろ発見できたのに、と思う方もいるかもしれません。
瀬戸内国際芸術祭2013 作品巡り−伊吹島 後編_e0331722_226781.jpg
そして、半日の島巡りの最後は、お土産。
旧小学校前の合田商店では、スープを麺に練り込んだうどんや、ほたるいかを干したものが安く買えます。
瀬戸内国際芸術祭2013 作品巡り−伊吹島 後編_e0331722_2271779.jpg
こちらは、伊吹商店のふりかけ。伊吹で取れたいりこと、企業秘密の材料を入れた、甘口ですが品のあるふりかけです。最近では、西は九州から北海道まで、そして、海外からも、注文が来ているようです。ここには、他にも、酒のおつまみに最適な魚系の乾物が豊富です。
瀬戸内国際芸術祭2013 作品巡り−伊吹島 後編_e0331722_22145272.jpg
そして、ここは、路地を少し入り込んだところにある河童屋。ここもいりこのふりかけや乾物を置いていますが、ここに来たなら、買うだけでなく、ちょっと中で一休みしてはいかがでしょう。実は、ここは、島の井戸端会議の場で、ご婦人たちが集まって、話に花を咲かせています。ガイドブックには載っていない島の秘密の話を聞くには、絶好の場所です。
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取った漁業者から、直に、伊吹島名物の最高級品のいりこを買いたいというなら、真浦港から反対側の北浦の港に向かう、浜沿いの網元の数軒が、直接販売していますし、港前の漁協でも購入可能です。
そして、漁協でしか手に入らないのが、このいりこのタオル。これで鉢巻きすれば、もう立派な伊吹漁師です。
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by future-scape | 2013-08-20 22:34 | 瀬戸内国際芸術祭2013